兵庫県稲美町で2021年に発生した放火殺人事件で、大阪高裁は2025年3月14日、松尾留与被告(54)に対する懲役30年の一審判決を支持し、検察側の控訴を棄却した。
本事件は、被告が妹夫婦への恨みから自宅に放火し、同居していた小学生の甥2人が犠牲になったもので、検察は死刑を求刑していた。
親族間のトラブルや被告の知的障害が量刑判断に影響を与えた一方、遺族や市民からは「軽すぎる」との批判の声も上がっている。
【松尾留与】兵庫稲美町放火殺人事件の概要

松尾留与被告は2021年、兵庫県稲美町の自宅に放火。
この火災で、同居していた甥の侑城くん(当時12歳・小学6年生)と眞輝くん(当時7歳・小学1年生)が死亡した。
侑城くんはプロ野球選手を夢見る少年で、眞輝くんも野球が大好きな子供だった。
人物相関
- 松尾留与被告(54歳)
被害者兄弟の伯父で、無職。軽度の知的障害がある。 - 被害者兄弟
- 松尾侑城くん(12歳、小学6年生)
- 松尾眞輝くん(7歳、小学1年生)
- 被害者兄弟の両親
- 父親(事件当時59歳):妻の実家を支えるために松尾家に入居。
- 母親(事件当時49歳):被告の妹。
被害者の父親は、妻の家族に体調不安があったため、「一家を支えたい」という理由で同居を開始したそうだ。
松尾留与の犯行動機と供述内容「嫌がらせを受けていた」

同居生活の中で松尾被告は、無断で妹家族の部屋に入る、冷蔵庫から子供たちの弁当を食べるなどの問題行動を繰り返していた。
妹夫婦はこれに対処するため室内に防犯カメラを設置。
被告はこれに強い嫌悪感を抱き、「人間扱いされていない」と感じて妹夫婦への恨みが募っていったという。
被告は妹夫婦への恨みを晴らすため、
「あいつら(妹夫婦)の一番大事なものを奪って、俺の苦しみを分かってもらいたかった」
と供述。
子供たちが就寝中に、階段下の押し入れに火をつけるという計画的な犯行を行った。
子供たちが逃げ遅れることを狙った残虐な犯行だったと裁判でも指摘された。
【残虐】犯行の目的とは?
松尾被告は、妹夫婦に精神的苦痛を与えるという目的のために、無関係の子供たちを標的に選んだ。
しかも、子供たちが就寝中の深夜に、逃げ場を絶つように階段付近から火をつけるという手口は、極めて残虐で計画性の高いものだった。
【知的障害が影響した?】松尾留与の裁判判決

松尾被告は妹夫婦への恨みから自宅に放火し、甥の小学生兄弟2人が犠牲となった事件で、被告の知的障害が量刑判断に影響したとみられている。
検察側は死刑を求刑していたが、裁判所は親族間トラブルや被告の障害を考慮して有期刑を選択、この判断に「子供の命が軽視されている」との批判が相次いでいる。
一審判決(2024年2月15日、神戸地裁姫路支部)懲役30年
検察側は「妹夫婦への恨みを晴らすためだけに2人の尊い命を奪った身勝手で悪質なもの」と指摘し、「無差別殺人に通じる理不尽極まりない犯行」として死刑を求刑した。
一方、弁護側は松尾被告の軽度の知的障害や、妹夫婦による防犯カメラ設置などで精神的に追い詰められていた点を主張。
被告は犯行をためらう様子もあったとして、「生命軽視が甚だしいとは認められない」と情状酌量を求めた。
裁判長は「妹夫婦への恨みを晴らすためだけに2人の命を奪った身勝手で悪質な犯行」と指摘しつつも、親族間トラブルや軽度の知的障害が背景にあることから、「死刑選択がやむを得ないとはいえない」と判断。
最も長期の有期刑である懲役30年を言い渡した。
二審判決(2025年3月14日、大阪高裁)控訴を棄却
検察側は一審判決が「著しく軽きに失して不当」として控訴。
再度死刑を求刑した。
恨みの対象ではない兄弟の殺害について、「無差別殺人に通じる理不尽極まりない犯行」と改めて指摘した。
弁護側は一審と同じく、被告が犯行をためらったことなどから、「生命軽視が甚だしいとは認められない」と主張した。
大阪高裁の伊藤寿裁判長は「軽すぎて不当とは言えない」として、一審の懲役30年という量刑を支持し、控訴を棄却した。
過去の類似事件と量刑の比較
過去の放火殺人事件と比較すると、本事件の量刑には疑問を呈する声も多い.
放火殺人事件の事例
事件名 | 罪状 | 量刑 | 特徴 |
---|---|---|---|
大阪母子放火殺人事件(2002年) | 現住建造物等放火・殺人 | 死刑 | 被害者は無関係の母子。計画性や残虐性が高く、社会的影響も大きかった。 |
長崎ストーカー放火殺人事件(2011年) | 現住建造物等放火・殺人 | 死刑 | 恨みから女性宅に放火し、家族を殺害。計画性と復讐目的が明確だった。 |
稲美町放火殺人事件(2021年) | 現住建造物等放火・殺人 | 懲役30年 | 親族間トラブルが背景。軽度の知的障害が考慮され、死刑回避。 |
過去の事例では、無関係な第三者を標的にした場合や社会的影響が大きい場合には死刑判決が下される傾向がある。
本事件でも被害者は無関係な子供だったが、親族関係や被告の障害が考慮されたようだ。
遺族の言葉「納得いかない」
被害者の両親は「30年という有期刑は納得いかない。私たち夫婦の大事な大事な生きがいである侑城と眞輝が何の罪もないにもかかわらず、この結果には本当に納得いかない」
と述べている。
法律専門家からは「親族間トラブルや知的障害など、特殊な事情を量刑判断に影響させた判断は法的には理解できる」との見方がある一方、「無関係な子供が標的になったという点では、過去の死刑判決の事案と大きな違いはない」との指摘もある。
市民の声「死刑が妥当」「軽すぎる」など批判殺到
松尾留与被告に対し、一審・二審とも懲役30年の判決が下された。
裁判所は被告の軽度知的障害を考慮した一方、無実の子供が犠牲になったことから「死刑が妥当」「刑が軽すぎる」など市民からの批判の声が相次いでいる。
怒りの声「子供の命が軽視されている」
「日本は人の命、特に子供の命が軽すぎます。何の罪もない子供達が身勝手な理由で未来を、命を奪われたのに、どうしてこんなに刑が軽いのでしょうか?」
といった声が多数上がっている。
被害者が無実の子供であることから、特に強い批判が集中している。
司法制度への不信感
「これで有期刑ですんでしまうとは、この国の量刑判断はどうなってるのか。まだ小さな子供かま二人も犯人の勝手な嫌がらせに巻き込まれて亡くなったというのに。日本の司法制度は一度根本から見直すべき」との意見も。
司法判断と市民感情の乖離を指摘する声は少なくない。
量刑基準への疑問
「親族間のトラブルで殺したら減刑されるんや」
「放火殺人で2人も殺しておいて懲役30年って、日本の裁判官の質がかなり落ちてきている」
など、親族間トラブルが量刑を軽減する要素になることへの疑問や、裁判官の判断自体を問う声も多い。
まとめ
兵庫県稲美町の放火殺人事件は、親族間のトラブルが極端な形で表出し、無関係の子供たちの命が奪われるという悲劇的な結末となった。
裁判所は被告の知的障害や親族間の複雑な関係性を考慮し、死刑ではなく懲役30年という判決を下した。
この判決には「死刑が妥当ではないか」という批判の声が多く寄せられている一方、「個別事情を慎重に評価した結果」との見方もある。
本事件は、司法判断と市民感情の乖離、そして家族間の複雑な問題が引き起こす悲劇について、社会に深い問いを投げかけている。
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