アップルのiPhoneやゲーム機器の製造で知られる台湾の電子機器大手「鴻海精密工業」が、電気自動車(EV)市場に本格参入し、日本の自動車メーカーとの協業を急速に進めている。
61万人超の従業員を抱える巨大企業が、なぜ日産や三菱自動車に接近しているのか。
アジア全域の自動車産業地図を塗り替える可能性も秘めた鴻海の戦略と、進行中の日台協業の全容に迫る。
鴻海精密工業とは? 読み方・社長・拠点など徹底解説

鴻海精密工業は1974年に台湾の首都、台北市(タンペイ)で設立され、現在は新北市に本社を置く世界最大の電子機器受託製造(EMS)企業だ。
劉揚偉(リュウ・ヤンウェイ)CEOが率いる同社は、アップルのiPhone、ソニーのプレイステーション、任天堂のスイッチなど、世界的に人気の高い電子機器の生産を請け負っている。
高度な生産技術とサプライチェーン管理能力を強みとする鴻海は、世界各国に製造拠点を展開。
特に、中国には全体の約7割の工場を保有し、その他インド、ベトナム、メキシコ、ブラジル、アメリカ、ヨーロッパ各地にも拠点がある。
2024年3月31日時点の従業員数は61万3,893人に達し、2023年度の売上高は6兆1,622億台湾ドルを記録。
フォーチュン・グローバル500ランキングでも32位(2024年)と高い位置を占めている。
【鴻海精密工業】どんな会社?何してる?

近年、鴻海は「3+3」戦略を掲げている。
「電気自動車(EV)・ジタルヘルス・ロボット」の3産業と、「AI・半導体・次世代通信」の3技術に注力しているのだ。
特にEV事業では、2020年10月に「MIH(Mobility In Harmony)」と呼ばれるEV開発のオープンプラットフォームを立ち上げた。
このプラットフォームは、EVの基本構造となるもので、モーター、バッテリー、ソフトウェアなどを標準化。
他企業がこれを利用することで、開発コストや時間を大幅に削減できる仕組みだ。
2021年には「FOXTRON」ブランドを設立し、「モデルC」「モデルE」「モデルT」という3つのEVコンセプトモデルを発表した。
これらはSUV、セダン、バスなど多様な車種で展開する計画だ。
【三菱自動車と協業】日本の自動車業界におけるEV事業

鴻海はEV開発・生産で世界シェア40%を目指しており、その戦略の一環として日本の自動車メーカーとの協業を模索している。
当初は日産自動車の個別買収を検討していたが、最近では「ホンダ、日産自動車、三菱自動車、ホンハイによる4社提携」を提案するなど、より広範な協力関係を追求している。
注目すべきは2025年3月20日に明らかになった三菱自動車との協業だ。
三菱自動車が、鴻海にEVの生産を委託する方針を決定したという。
この動きは、中国勢が台頭する自動車産業において、日台協力の拡大を目指す戦略と見られている。
鴻海は三菱自動車だけでなく、日産自動車やホンダとの連携にも意欲を示しており、日本の技術力と販売網を活用したEV事業の拡大を図っている。
まとめ
スマートフォンやゲーム機器の製造で成功を収めた鴻海精密工業は、EV事業を新たな成長の柱として位置づけている。
MIHオープンプラットフォームの開発や、日本の自動車メーカーとの提携を通じて、同社は製造業の枠を超えた総合テクノロジー企業への変貌を遂げようとしている。
電子機器の受託製造で培った高度な生産技術と、サプライチェーン管理能力を武器に、鴻海はEV市場においても存在感を示し始めた。
今後、日本の自動車メーカーとの協業がどのように進展するか、引き続き注目される。
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